QuiltArtFactory キルトアート工房│プロフィール

プロフィール

キルティングアーティスト 米倉 健史

いま、自分の絵(そして手法)について云える事・・・・米倉健史

30年通過して来て、何も変わっていない。自分の中に去来するささやかな絵心と描きたいと思う風景と登場する数少ないモチーフ。2,000点を越す作品群を前に思い起こせば、よくぞこれだけの事柄で、数えるほどのモチーフで30年を費やして絵を描いてきた、と驚く。
勿論「これでいいのか??」の自問自答は繰り返していた。これからもこの手法を続ける限り、その狭間に悩む事は明白。何も変わっていない自分自身。  30年の間に出会った人達は数え切れない。初めは不思議そうな眼差し、そして次第に微笑を浮かべられる。その姿を拝見するからこそ続けられた、絵描きとしての自分。シュールレアリズムの影響を受け、油彩画や今も制作を続けているオブジェが自分自身の本来の顔。
両極の同居。お互いが相まって、お互いを影響し合う。そして現在の作風になったと思う。キルティングアートの絵は何処にでもあるような普通の風景、反して何処にもない普通ではない風景なのだ。狭い自分自身というキャパの中、しかしその中で無限に広がるイマジネーション。
現実に自分自身を取巻く環境が色々な形で影響する。若年の頃のように反発せず、受け入れようとする姿勢に成れたのは30年という年月と、多くの人達に出会い影響し合い、学んできたからかもしれない。今はただ想い描くまま、時折本質に立ち戻り、反芻し、そして日常の制作に勤しむ。
手法の事で色々な雑音が気になっていた。今ではその事はどうでもよくなってきている。多種多様な視覚表現の中、自分の手法も確実に視覚表現伝達の方法の一つなのだから。制作発表の行為を継続させて、より多くの人達に楽しんでいただければ、それが僕の役目だと考える。

米倉健史の略歴

2010年
詩画集「Love Chair」改訂版出版
2007年
詩画集「重なる記憶/Overlapping Memories」発刊
2004年
「DREAMER」発刊 N.E.C.とコラボレーション第2弾
わがまま気ままな夢想人達のエッセーとオリジナル・ジャズの共演
2002年
詩画音集「episode」発刊(CD付)
スピリチュアル ジャズ ユニット N.E.C.とコラボレーション
2001年
油彩画・銅版画 制作発表
2000年
詩画集「Love Chair」出版
1999年
Box Construction 制作発表
出版部門・紙飛行機舎発足
詩画集「Christmas Box」出版
1998年
絵本「かみひこうきとんだ」でボローニャ国際児童図書展賞受賞
1986年
キルトアート工房設立 作家活動に入る
1977年
布によるイラストレーション(キルティングアート)を始める
1969年
フリーのイラストレーターとして始動
1961年
日本写真専門学校フォトデザイン科卒業

米倉健史のキルティングアート

「キルティングアート」とは布で描くイラストレーション、布で描く絵を意味する造語です。1976年、カメラマン、デザイナーを経て「独自の絵の表現」を模索していた米倉健史は、布を縫い合わせて絵を描くことを思いつき、これを「キルティングアート」と名付けました。水彩、油彩、あらゆる画材で描いてきた彼は、布を使って仕上がった絵をみて、その新鮮さに心を奪われました。見慣れていたはずの自分の絵が、今までに見たことの無い全く新しいものとして彼の心を動かしたのです。「やめたほうがいい。」「描く方が早い。」という周囲の言葉を尻目に、「これこそが自分らしさの表現かもしれない。」と布を画材に選び、試行錯誤を繰り返しながら、制作を続けました。布は温かさや柔らかさ、肌触りまでも伝えます。縫うことによってできる陰影から生まれる不思議な空間・・・仕上がるごとにますます布に魅せられていきました。

描いたのは心の中の風景。シンプルに始まったイマジネーションの風景は広がりをみせ、独自の世界を形成していきました。やがて彼自身がその世界の中で未だ見ぬ風景を探し、旅を始めたのです。

膨らみつづける彼のイメージを忠実に伝えるために「絵の具」としての布は微妙に染め分けられていきました。色数は増えつづけ、今では500色を超えています。作品ごとに表現はますます繊細で緻密になり、縫製技術の向上も不可欠です。「布を縫う」という手法から手芸の一種だと誤解を受けることもありましたが、あくまでも「アート」として独自の世界を追求しつづけるひたむきな姿勢を一人でも多くの方に知っていただけたら・・と思います。

彼の作品は「みる」よりも「のぞきこむ」方が似合います。それは彼が布を使って一枚の絵を描き、そこに一つの世界をつくりだすからでしょうか。

そこにはどこまでも続く空が広がり、巨大な雲が沸き立ち、陽は眩しいほどに差し込みます。風にふかれるまま自転車が2台。小さな小さな世界で物語がはじまります。のぞき込んでいるうちに、誰もがその世界に取り込まれていくような心地よい錯覚にとらわれることでしょう。

「米倉健史の描く物語に耳をかたむける。」そんなひと時をぜひお過ごしください。 

(文:村崎レイン)